子どもは殺し文句を知っている

小学校五年生の信郎君は四日前に発売されたドラゴンクエストのゲームソフトが欲しくてたまりません。

とうとう我慢できずに、お母さんのSさんの職場に電話をかけてきました。

 

「先月、ゲームソフトを買ったばかりでしょ」と、Sさん。

  「あれは、ファイナルファンタジーのソフト、今度のはドラクエのソフトなの」

「お誕生日に買ってあげる、あと一ヵ月なんだから」

  「でもね、聖二君に約束しちゃったんだ、今度発売されたドラクエのソフト貸してあげるって」

「何で、勝手に約束しちゃうの?」

  「だってさ、前にスーパーマリオのソフトが発売されたとき、聖二君から借りたんだもん。そのときさ『これ貸してあげるから、今度発売されるドラクエは信郎が買うんだよ』って言ったんだもの」

「だから、一カ月待ってもらったら」

  「ダメダメ、今週中って約束したんだ、約束は破ったらいけないって、お母さんいつも言っているでしょ」

「約束っていったって、もう一回話してよ・・・」

  「一度約束したら、守らなきゃ。そんなことウジウジ言っていたら聖二君から嫌われちゃうよ

 

今回は、これが殺し文句でした。

 

そうです、信郎君は聖二君と大の仲良しですが、「今日の親友は明日のいじめっ子、というのが最近の子ども事情。ここで信郎が聖二君の申し出を断ったらまずいかも」と、信郎君の同級生で、いじめが原因で不登校になった子のことが、Sさんの頭のなかをよぎったのです。

 

職場ですから、いつまでも子どもと議論しているわけにはいきません。

信郎君もそれを承知のうえで、電話をかけてくるのです。

 

周りの目が気になってSさんは、幼い信郎君を連れてよくスーパーへ買い物に行ったのですが、次のようなこともありました。

 

「お菓子は、ゼリーは1つだけ買ってあげるから、それ以上はだめよ」と、Sさんは信郎君に言いきかせておきました。

お菓子売り場へ行くと、案の定、ゼリー1つではすみません。

信郎君はチョコレートが欲しいと騒ぎ出しました。

ただ買ってと騒いでも買ってくれないのは知っていたので、通路にひっくり返りました。

それでも今日こそは買うまいと思っていたところ、通りかかった年輩の女性が、「あらまあ、みんなに迷惑かけて・・・」と、聞こえよがしにつぶやくのでした。

Sさんの頭には、血がカーッとのぼってしまいました。

そして、「じゃ、ゼリーとチョコレートだけね」と言ってしまったのです。

 

周りへの迷惑か、子どもへのしつけか、多くのお母さんが迷う場面でしょう。

家のなかでしたら、駄々をこねている子どもは放っておけばよいのですが、公共の場ではそうもいきません。

そして、子どもはそのことをよく知っているのです。

 

次のような場合のアドバイスとしては

まず、子どもを抱きかかえて、なるべく迷惑にならない場所へ連れて行きます。

子どもも興奮していますから、じつと押さえつけて興奮が少し治まったところで、「お買い物すんだから帰ろうね。ゼリー1つだけっていうお約束だったよね」と、冷静に、短い言葉で切り上げます。

ちょっとぐらい「買って」と言っても、お母さんは自分の「言うことをきいてくれない」けれど、ひどく駄々をこねればお母さんは「言うことをきいてくれる」と、子どもに思わせてしまえば、ますます「言うことをきかない」子が育つのです。

そのためにも、一度言いきかせたことは、絶対にひるがえさないことが肝心です。

このお話は次回に続きます。