3歳以上児の保育内容

はじめに

この時期においては、運動機能の発達により、基本的な動作が一通りできるようになるとともに、基本的な生活習慣もほぼ自立できるようになります。

理解する語彙数が急激に増し、知的興味や関心も高まっていきます。

仲間と遊ぶなかで、仲間の中の一人という自覚が生じ、集団的な遊びや協同的な活動も見られるようになりますので、この時期の保育においては、個の成長と集団としての活動の充実が図られるようにしなければなりません。

この時期の発達の特徴を踏まえ、心身の健康、人との関わり、身近な環境との関わり、言葉の獲得及び感性と表現に関する内容が、一体となって行われるように注意して保育していきましょう。


心身の健康

これは、健康な心と体を育て、自ら健康で安全な生活をつくり出す力を養うことです。

この時期は、明るく伸び伸びと行動し、充実感を味わいながら、自分の体を十分に動かし、進んで運動しようとする意欲を助長することが大切です。

また同時に、健康、安全な生活に必要な習慣や態度を身に付け、子どもが見通しをもって行動できるように指導しましょう。

保育者や友達と触れ合って、気分のムラがあまりなく、楽しみながらいろいろな遊びの中で十分に体を動かすことによって必要な運動能力を身に着けることが求められます。

心と体の健康は、相互に密接な関連があるものであることを踏まえ、子どもが保育者や他の子どもとの温かい触れ合いの中で、自己の存在感や充実感を味わうことなどを基盤として、しなやかな心と体の発達を促すことが必要です。

特に、十分に体を動かす気持ちよさを体験し、自ら体を動かそうとする意欲が育つようにしましょう。

様々な遊びの中で、子どもが興味や関心、能力に応じて全身を使って活動することにより、体を動かす楽しさを味わい、自分の体を大切にしようとする気持ちを育てながら、子どもが多様な動きを経験して、体の動きを調整することができるように指導していきしょう。

また、様々な活動に親しみ、楽しんで取り組む意欲を育たいので、子どもの興味や関心が戸外にも向くようにしましょう。

自然の中で伸び伸びと体を動かして遊ぶことにより、体の諸機能の発達が促されていきます。

 

保育者や友達と食べることを楽しみ、食べ物への興味や関心を持たせましょう。

健康な心と体を育てるためには、食育を通じた望ましい食習慣の形成が大切であることを踏まえ、子どもの食生活の実情に配慮し、和やかな雰囲気の中で保育者や他の子どもと食べる喜びや楽しさを味わったり、様々な食べ物への興味や関心をもったりするなどして、食の大切さに気付き、進んで食べようとする気持ちが育つようにすることが大切です。

健康な生活のリズムを身に付け、身の回りを清潔にし、衣服の着脱、食事、排泄などの生活に必要な活動を自分で行えるようになることが望まれます。

保育園等における生活の仕方を知り、白分たちで生活の場を整えながら見通しをもって行動する力を養っていきましょう。

基本的な生活習慣の形成に当たっては、家庭での生活経験に配慮し、子どもの自立心を育てていきましょう。

保育園などでは、子どもが他の子どもと関わりながら主体的な活動を行う中で、生活に必要な習慣を身に付け、次第に見通しをもって行動できるように指導がなされていきます。

危険な場所や危険な遊び方、災害時などの行動の仕方が分かり、安全に気を付けて行動できるように定期的に指導を繰り返して行いましょう。

安全に関する指導に当たっては、情緒の安定を図り、遊びを通して安全についての構えを身に付けさせることが重要です。

子どもが自ら、危険な場所や事物などが分かり、安全についての理解を深めるようにすること。

また、交通安全の習慣を身に付けるようにするとともに、家庭でも災害などの緊急時に適切な行動がとれるように指導訓練することが大切です。

 

人との関わり

これは、他の人々と親しみ、支え合って生活するために、自立心を育て、人と関わる力を養うことです。

保育者や友達と共に過ごすことの喜びを味わい、自分で考え、自分で行動する力を育てましょう。

白分でできることは自分でする習慣を身に着け、いろいろな遊びを楽しみながら物事をやり遂げようとする気持ちを持たせましょう。

保育者との信頼関係に支えられて自分白身の生活を確立していくことが人と関わる基盤となることを考慮し、子どもが自ら周囲に働き掛けることにより多種多様な感情を体験し、試行錯誤しながら諦めずにやり遂げることの達成感や、前向きな見通しをもって自分の力で行うことの充実感を味わうことができるよう、子どもの行動を見守りながら適切な援助を行うようにすることが大切です。

子どもたちが集団を形成しながら、人と関わる力を育てていくようにすることが大切です。

友達と積極的に関わりながら喜びや悲しみを共感し合うことを通して、集団の生活の中で、子どもが自己を発揮し、保育者や他の子どもに認められる体験をし、自分のよさや特徴に気付き、自信をもって行動できるよう育てましょう。

また、保育園等では子どもが互いに関わりを深め、協同して遊ぶようになるため、自ら行動する力を育てながら、他の子どもと試行錯誤しながら活動を展開する楽しさや共通の目的が実現する喜びを味わうことができるようにすることが大切です。

友達のよさに気付き、一緒に活動する楽しさを味わい、友達と楽しく活動する中で、共通の目的を見いだし、一緒に工夫したり、協力したりする活動をさせましょう。

集団で遊ぶ中で、よいことや悪いことがあることに気付き、考えながら行動することを学ばせましょう。

友達との関わりを深め、思いやりをもつこと、共同の遊具や用具を大切にし、皆で使うなど、友達と楽しく生活する中できまりの大切さに気付き、守ろうとする心を育てましょう。

集団の生活を通して、子どもが人との関わりを深め、規範意識の芽生えが培われることを考慮し、子どもが保育者との信頼関係に支えられて自己を発揮する中で、互いに思いを主張し、折り合いを付ける体験をし、きまりの必要性などに気付き、自分の気持ちを調整する力が育つように指導していきましょう。

高齢者をはじめ地域の人々などの自分の生活に関係の深いいろいろな人と触れ合い、自分の感情や意志を表現しながら共に楽しみ、共感し合う体験を通して、これらの人々などに親しみをもつことを通して、人と関わることの楽しさや人の役に立つ喜びを味わうことができるようにすること。

また、生活を通して親や祖父母などの家族の愛情に気付き、家族を大切にしようとする気持ちが育つようにすることも大切なことです。

 

身近な環境との関わり


身近な環境に親しみ、自然と触れ合う中で様々な事象に興味や関心をもつような体験を数多く持たせましょう。

自然に触れて生活し、その大きさ、美しさ、不思議さなどに気付くことは感性を育てるために大切なことであり、生活の中で、様々な物に触れ、その性質や仕組みに興味や関心をもつことは探求心を育てます。

子どもが、遊びの中で周囲の環境と関わり、次第に周囲の世界に好奇心を抱き、その意味や操作の仕方に関心をもち、物事の法則性に気付き、自分なりに考えることができるようになる過程を大切にしたいです。

また、他の子どもの考えなどに触れて新しい考えを生み出す喜びや楽しさを味わい、自分の考えをよりよいものにしようとする気持ちが育つように指導していきましょう。

身近な環境に自分から関わり、発見を楽しんだり、考えたりしそれを生活に取り入れようとする体験をさせましょう。

自然などの身近な事象に関心をもち、取り入れて遊ぶことによって、季節により自然や人間の生活に変化のあることに気付くようになります。

幼児期において自然のもつ意味は大きく、自然の大きさ、美しさ、不思議さなどに直接触れる体験を通して、子どもの心が安らぎ、豊かな感情、好奇心、思考力、表現力の基礎が培われることを踏まえ、子どもが自然との関わりを深めることができるよう工夫しましょう。

身近な動植物に親しみをもって接し、生命の尊さに気付き、いたわったり、大切にしたりする心を大切に育てたいです。

そのために、身近な事象や動植物に対する感動を伝え合い、共感し合うことなどを通して、自分から関わろうとする意欲を育てましょう。

関わることを通して、それらに対する親しみや畏敬の念、生命を大切にする気持ち、公共心、探究心などが養われるようにすることが大切です。

文化や伝統に親しむことも貴重な体験になります。

実際に唱歌、わらべうたや伝統的な遊びに親しんだり、異なる文化に触れる活動に親しんだりすることを通じて、社会とのつながりの意識や国際理解の意識の芽生えなどが養われるようになります。

また、数量や文字などに関しては、日常生活の中で子ども自身の求める体験を大切にし、数量や文字などに関する興味や関心、感覚が養われるようにすることも大切です。

 

言葉の獲得について

これは、経験したことや考えたことなどを自分なりの言葉で表現し、相手の話す言葉を聞こうとする意欲や態度を育て、「言葉に対する感覚」や「言葉で表現する力」を養うことです。

言葉は、身近な入に親しみをもって接し、自分の感情や意志などを伝え、それに相手が応答し、その言葉を聞くことを通して次第に獲得されていくものです。

これを踏まえて、子どもが保育者や他の子どもと関わることにより、心を動かされるような体験をしながら、言葉を交わす喜びを味わえるようにしていきましょう。

子どもが、「行ったり・見たり・聞いたり・感じたり・考えたり等」したことを、自分なりに言葉で表現できるように保育者が補ってあげましょう。

したいこと・して欲しいことを言葉で表現したり、分からないことを尋ねたりするなかで、子どもは自分の思いを言葉で伝えながら、保育者や他の子どもなどの話に興味をもって注意して聞くようになります。

そして次第に話を理解するようになっていくなかで、言葉による伝え合いができるように指導していきましょう。

人の話を注意して聞き、相手に分かるように話したり、生活の中で必要な言葉が分かり、使うようになったり、親しみをもって日常の挨拶ができるように育てていきましょう。

 

感性と表現について

これは、感じたことや考えたことを、自分なりに表現することを通して、豊かな感性や表現する力を養い創造性を豊かにすることです。

いろいろなものの美しさなどに対する豊かな感性をもつことは大切なことで、生活の中で様々な音、形、色、手触り、動きなどに気付いたり、感じたりするなどして楽しませるようにしましょう。

豊かな感性は、身近な環境と関わる中で、美しいもの、優れたもの、心を動かす出来事などに出会い、そこから得た感動を他の子どもや保育者と共有させてみましょう。

さらに、風の音や雨の音、身近にある草や花の形や色など自然の中にある音、形、色などに注意を払い、その体験を通して、様々な表現する力が養われるようにしていきましょう。

子どもの自己表現は、素朴な形で行われることが多いので、保育者はそのような表現を受け入れて、子ども自身の表現しようとする意欲を受け止めながら、生活の中で様々な表現を楽しむことができるようにしましょう。

感じたこと、考えたことなどを音や動きなどで表現したり、自由にかいたり、つくったりなど、いろいろな素材に親しみ、工夫して遊ばせましょう。

また、音楽に親しみ、歌を歌ったり、簡単なリズム楽器を使ったりなどする楽しさを味わうことも大切な活動です。

生活経験や発達に応じ、自ら様々な表現を楽しみ、表現する意欲を十分に発揮させることができるように、遊具や用具などを整えたり、様々な素材や表現の仕方に親しんだりして、自己表現を楽しめるように工夫していきましょう。


保育の実施に関して留意すべき事項

ア 子どもの心身の発達及び活動の実態などの個人差を踏まえるとともに、一人一人の子どもの気持ちを受け止め、援助すること。

イ 子どもの健康は、生理的・身体的な育ちとともに、自主性や社会性、豊かな感性の育ちとがあいまってもたらされることに留意すること。

ウ 子どもが自ら周囲に働きかけ、試行錯誤しつつ自分の力で行う活動を見守りながら、適切に援助すること。

工 子どもの入所時の保育に当たっては、できるだけ個別的に対応し、子どもが安定感を得て、次第に保育園の生活になじんでいくようにするとともに、既に入所している子どもに不安や動揺を与えないようにすること。

オ 子どもの国籍や文化の違いを認め、互いに尊重する心を育てるようにすること。

力 子どもの性差や個人差にも留意しつつ、性別などによる固定的な意識を植え付けることがないようにすること。

 

小学校との連携

 ア小学校以降の生活や学習の基盤の育成につながることに配慮し、幼児期にふさわしい生活を通じて、創造的な思考や主体的な生活態度などの基礎を培うようにすること。

イ小学校教育が円滑に行われるよう、「幼児期の終わりまでに育って欲しい姿」を家庭でも理解したうえで、小学校教育への円滑な接続を図るよう努めること。