はじめに
この時期においては、基本的な運動機能が次第に発達し、歩く、走る、跳ぶなど活発に体を動かすようになります。
また、指先の機能も発達して、つまむ、めくるなどが上手にできるようになり、食事、衣類の着脱なども周囲の大人の援助の下、自分で行うようになります。
発声も明瞭になり、語彙も増加し、自分の意思や欲求を言葉で表出できるようになるなど、自分でできることが増えてくる時期であることから、保護者や保育士等は、子どもの生活の安定を図りながら、自分でしようとする気持ちを尊重し、愛情豊かに、応答的に関わることが必要です。
この時期の発達の特徴を踏まえ、「心身の健康」「人との関わり」「身近な環境との関わり」また「言葉の獲得」及び「感性と表現」に関するに内容を、バランスよく考えながら、それらが一体となって保育が行われるものであることに留意が必要です。
心身の健康
健康な心と体を育て、自ら健康で安全な生活をつくり出す力を養うことは極めて大切なことです。
この時期は、明るく伸び伸びと生活し、自分から体を動かすことを楽しみながら、自分の体を十分に動かし、様々な動きをしようとする時期です。
また、健康、安全な生活に必要な習慣に気付き、自分でしてみようとする気持ちが育つ時期でもあります。
保護者や保育士等の愛情豊かな受容の下で、安定感をもって生活をしながら、食事や午睡、遊びと休息など、様々な生活のリズムが形成されていきます。
「心と体の健康」は、相互に密接な関連があるものであることを踏まえて、子どもの気持ちに配慮した温かい触れ合いの中で、心と体の発達を促すことが大切です。
子どもたちには、走る、跳ぶ、登る、押す、引っ張るなど全身を使う遊びを楽しませながら、同時に、様々な食品や調理形態に慣れ、ゆったりとした雰囲気の中で食事や間食を楽しませることも大切にしていきたいです。
特に、発育の個人差に応じて、体を動かす機会を十分に確保しながら、自ら体を動かそうとする意欲が育つようにすることを心がけましょう。
「健康な心と体を育てる」ためには望ましい食習慣の形成が重要であることを十分に踏まえて、ゆったりとした雰囲気の中で食べる喜びや楽しさを味わい、進んで食べようとする気持ちが育つように配慮しましょう。
食物アレルギーのある子どもは、医師の指示や協力の下に適切に対応することが肝要です。
また、身の回りを清潔に保つ心地よさを感じ、その習慣が少しずつ身に付き始め、周囲の助けを借りながら、衣類の着脱を自分でしようとします。
徐々に便器での排泄にも慣れてきて、自分で排泄ができるように成長していくのもこの時期です。
排泄の習慣については、一人一人の排尿間隔等を踏まえ、おむつが汚れていないときに便器に座らせるなどにより、少しずつ慣れさせるようにしましょう。
食事、排泄、睡眠、衣類の着脱、身の回りを清潔にすることなど、生活に必要な基本的な習慣については、子どもの状態に応じて、落ち着いた雰囲気の中で行うようにし、子どもが自分でしようとする気持ちを尊重することが大切です。
子どもを保育園等に通わせている場合は、基本的な生活習慣の形成に当たっては、家庭と幼児施設との適切な連携の下で行うようにすることが大切です。
人との関わり
家庭や保育園での生活を楽しみ、身近な人と関わる心地よさを感じる時期です。
幼児施設では、保育士等や周囲の子ども等との安定した関係の中で、共に過ごす心地よさを感じながら、保育士等との信頼関係に支えられて生活を確立していきます。
また、自分で何かをしようとする気持ちが旺盛になる時期であることに注視しながら、そのような子どもの気持ちを尊重し、温かく見守り、愛情豊かに援助を行うようにすることが大切です。
またこの時期は、周囲の子ども等への興味や関心が高まり、関わりをもとうとする時期です。
保護者や保育士等の受容的、応答的な関わりの中で、欲求を適切に満たし、安定感をもって過ごすことが求められます。
思い通りにいかない場合等の子どもの不安定な感情の表現については、保護者や保育士等が受容的に受け止めて、そうした気持ちから立ち直る経験や感情をコントロールすることへの気付きにつなげていけるように、方向付けをしたいですね。
保育所等では、生活の仕方に慣れ、きまりの大切さに気付く時期です。
身の回りに、様々な人がいることに気付き、徐々に他の子どもと関わりをもって遊ぶようになります。
保育士等が中に入って、他の子どもとの関わり方を少しずつ身につけていきます。
保育所等の生活の仕方に慣れていくと同時に、そこでの決まりがあること、そして、それが大切であること気付いていきます。
この時期は、自分と他者との違いの認識が、まだ十分ではないことから、子どもの自我の育ちを見守りながら、保護者た保育士等が、自分の気持ちを相手に伝えることや、相手の気持ちに気付くことの大切さを教えながら、友達の気持ちや友達との関わり方を丁寧に伝えていくことが必要です。
身近な環境との関わり
この時期は、周囲の様々な環境に好奇心や探究心をもって関わりながら、それらを生活の中に取り入れていこうとする力を養うことが必要です。
身近な環境に親しみ、触れ合う中で、様々なものに興味や関心をもち、安全で活動しやすい環境での探索活動等を通して、見る、聞く、触れる、嗅ぐ、味わうなどの感覚の働きを豊かにすることが大切です。
玩具などは、音質、形、色、大きさなど子どもの発達状態に応じて適切なものを選んで、遊びを通して感覚の発達が促されるように工夫しましょう。
子どもたちが様々なものに関わる中で、発見を楽しんだり考えたりしようとします。
玩具、絵本、遊具などに興味をもち、それらを使った遊びを楽しみます。
また、身近な生き物との関わりについては、子どもが命を感じ、生命の尊さに気付く経験へとつながるものであることから、そうした気付きを促すような関わりとなるように配慮しましょう。
身の回りの物に触れる中で、形、色、大きさ、量などの物の性質や仕組みに気付き、見る、聞く、触るなどの経験を通して、子どもたちは感覚の働きが豊かに成長していきます。
また、地域の生活や季節の行事などに触れる際には、社会とのつながりや地域社会の文化への気付きにつながるものとなることが望ましです。
言葉の獲得
この時期は、経験したことや考えたことなどを自分なりの言葉で表現し、相手の話す言葉を聞こうとする意欲や態度を育て、言葉に対する感覚や言葉で表現する力を養うことがとても大切です。
言葉遊びや言葉で表現する楽しさを感じる時期です。
身近な人に親しみをもって接し、自分の感情などを伝え、それに相手が応答し、その言葉を聞くことを通して、次第に言葉が獲得されていきます。
そのことを考慮して、楽しい雰囲気の中で保護者や保育士等との言葉のやり取りができるように育てましょう。
また、人の言葉や話などを聞き、盛んに自分でも思ったことを伝えようとします。
子どもが自分の思いを言葉で伝えて、他の子どもの話などを聞くことを通して、次第に話を理解し、言葉による伝え合いができるようになるように、気持ちや経験を言葉で表現する(言語化を行う)ことを手伝うなど、子ども同上の関わりの仲立ちを行うようにすることが求められます。
絵本や物語等が大好きになり、それらに親しみながら、言葉のやり取りを通じて身近な人と気持ちを通わせる時期です。
この時期は、片言から、二語文が操れるようになり、ごっこ遊びでのやり取りができる程度へと、大きく言葉の習得が進む時期です。
子どもの発達の状況に応じて、遊びや関わりの工夫などを重ねて、保育の内容を適切に行うことが必要です。
感性と表現
この時期、子どもたちは、感じたことや考えたことを自分なりに表現することを通して、豊かな感性や表現する力を養いながら創造性を豊かに成長していきます。
身体の諸感覚の経験を豊かにしながら、様々な感覚を味わうことが大切です。
子どもの表現は、遊びや生活の様々な場面で表されています。
それらを周囲の大人が積極的に受け止め、様々な表現の仕方や感性を豊かにする経験をさせましょう。
それらを周囲の大人が積極的に受け止め、様々な表現の仕方や感性を豊かにする経験をさせましょう。
子どもは、感じたことや考えたことなどを自分なりに表現しようとします。
試行錯誤しながら様々な表現を楽しむことや、自分の力でやり遂げる充実感などに気付くよう、温かく見守るとともに、適切に援助を行うようにしましょう。
試行錯誤しながら様々な表現を楽しむことや、自分の力でやり遂げる充実感などに気付くよう、温かく見守るとともに、適切に援助を行うようにしましょう。
また、生活や遊びの様々な体験を通して、イメージや感性が豊かになっていきます。
様々な感情の表現等を通じて、子どもが自分の感情や気持ちに気付くようになる時期であることを忘れずに、受容的な関わりの中で自信をもって表現をすることや、諦めずに続けた後の達成感等を感じられるような経験が蓄積されるようにすることがとても大切です。
身近な自然や身の回りの事物に関わる中で、発見や心が動く経験が得られるよう、諸感覚を働かせることを楽しむ遊びや素材を用意するなど保育環境を整えることを心がけましょう。
保育の実施に関わる配慮事項
ア 特に感染症にかかりやすい時期であるので、体の状態、機嫌、食欲などの口常の状態の観察を十分に行うとともに、適切な判断に基づく保健的な対応を心がけること。
イ 探索活動が十分できるように、事故防止に努めながら活動しやすい環境を整え、全身を使う遊びなど様々な遊びを取り入れること。
ウ 自我が形成され、子どもが自分の感情や気持ちに気付くようになる重要な時期であることに鑑み、情緒の安定を図りながら、子どもの自発的な活動を尊重するとともに促していくこと。