乳児期の保育内容

はじめに

乳児期は、視覚、聴覚などの感覚器官が発達し、それに伴って、運動機能が著しく発達します。

座る、はう、歩くなど、それらの動きを通じて外界を自己体験していきます。

また、お母さんやお父さんなどの、特定の大人と応答する関わりを通じて、情緒的な絆が作られるというような特徴があります。

 

この時期の発達の特徴を踏まえ、一人一人の子どもが、健やかに伸び伸びと育ち身近な人と気持ちが通じ合い身近な物事と関わることで感性が育つように育てたいものです。

つまり、身体的発達、社会的発達、精神的発達に関する視点から育児・保育することが大切です。

 

健やかに伸び伸びと育つために

 

健康な心と体を育て、自ら健康で安全な生活をつくり出す力の基盤を培うことは、何にもまして大切なことです。

乳児期は、身体感覚が育ち、快適な環境に心地よさを感じながら、伸び伸びと体を動かし、はう、歩くなどの運動をしようとします。

また、食事、睡眠等の生活のリズムの感覚が芽生えるのもこの時期です。

保護者や保育士等の愛情豊かな受容の下で、生理的・心理的欲求を満たし、心地よく生活をすることが大切です。

心と体の健康は、相互に密接な関連があるものであることを踏まえ、温かい触れ会いの中で、心と体の発達を促しましょう。

 

一人一人の発育に応じて、はう、立つ、歩くなど、十分に体を動かしましょう。特に、寝返り、お座り、はいはい、つかまり立ち、伝い歩きなど、発育に応じて、遊びの中で体を動かす機会を十分に確保し、体を動かそうとする意欲が育つようにすることが大切です。

個人差に応じて授乳を行い、離乳を進めていく中で、様々な食品に少しずつ慣れ、食べることを楽しませましょう。

健康な心と体を育てるためには、望ましい食習慣の形成が重要であることを踏まえ、離乳食が完了期へと徐々に移行する中で、様々な食品に慣れるようにするとともに、和やかな雰囲気の中で食べる喜びや楽しさを味わい、進んで食べようとする気持ち力育つように努めましょう。

なお、食物アレルギーのある子どもへの対応については、医等の指示や協力の下に適切に対応すること、これは必ず行いましょう。

また、おむつ交換や衣服の着脱などを通じて、清潔になることの心地よさを感じることも大切です。

 

身近な人と子どもの気持ちが通い合うために

 

自分が身の回りの世話をしてもらったり、親や保育士の語りかけに対する応答的な関わりを経験したりするのかで、何かを伝達しようとする「意欲」や、身近な大人との「信頼関係」を育て、人と関わる基本的な能力の基盤を培う大切な時期です。

乳児期は、安心できる関係の下で、身近な人と共に過ごす喜びを感じ、体の動きや表情、発声等により、親や保育士等と気持ちを通わせようとします。また、身近な入と親しみ、関わりを深め、愛情や信頼感が芽生える時期でもあります。

親や保育士等との信頼関係に支えられて生活を確立していくことが、人と関わる基盤となることを考慮して、子どもの多様な感情を受け止め、温かく受容的・応答的に関わり、一人一人に応じた適切な援助を行うようにすることが大切です。

 

子どもからの働きかけを踏まえた、応答的な触れ合いや言葉かけによって、欲求力が満たされ、安定感をもって過ごすことができます。

身近な人に親しみをもって接し、自分の感情などを表し、それに相手が応答する言葉を聞くことを通して、次第に言葉が獲得されていくことを考慮して、楽しい雰囲気の中での周囲の大人との関わり合いを大切にし、ゆっくりと優しく話しかけるなど、積極的に言葉のやり取りを楽しむことができるようにすることが求められます。

 

また、親や保育士等による語りかけや歌いかけ、発声や哺語等への応答を通じて、言葉の理解や発語の意欲が育つのもこの時期です。

体の動きや表情・発声・哺語等を優しく受け止めてもらうことによって、身近な大人とのやり取りを楽しみ、生活や遊びの中で、自分の身近な人の存在に気付いて親しみの気持ちを表します。

 

温かく、受容的な関わりを通じて、自分を肯定する気持ちが芽生えます、この自己肯定感の度合いはそれぞれの子どもたちの人生を方向付けることに繋がります。

 

身近なものと関わることで生じる感性

身近な環境に興味や好奇心をもって関わることによって、感じたことや考えたことを表現する能力の基盤を培う時期です。

 

乳児期は、身の回りのものに親しみ、様々なものに興味や関心をもち、見る、触れる、探索するなど、身近な環境に自分から関わろうとする時期です。

身体の諸感覚による認識が豊かになり、表情や手足、体の動き等で表現するようになります。

 

身近な生活用具、玩具や絵本などが用意された中で、身の回りのものに対する興味や好奇心をもちます。

玩具などは、音質、形、色、大きさなど子どもの発達状態に応じて適切なものを選び、その時々の子どもの興味や関心を踏まえるなど、遊びを通して感覚の発達が促されるものとなるように工夫することが大切です。

なお、安全な環境の下で、子どもが探索意欲を満たして自由に遊べるように、身の回りのものについては、常に十分な点検を行うことを怠らないように注意しましょう。

生活や遊びの中で様々なものに触れ、音、形、色、手触りなどに気付き、感覚の働きを豊かにするように努めてください。

 

乳児期においては、表情、発声、体の動きなどで、感情を表現することが多いことから、これらの表現しようとする意欲を積極的に受け止めて、子どもが様々な活動を楽しむことを通して表現が豊かになるようにすることが大切です。

親や保育士等と一緒に様々な色彩や形のものや絵本などを見たり、玩具や身の回りのものを、つまむ、つかむ、たたく、引っ張るなど、手や指を使って遊ぶ経験を数多くさせましょう。

 

育児、保育の実施に伴なう注意(配慮する内容)

乳児は疾病への抵抗力が弱く、心身の機能の未熟さに伴う疾病の発生が多いことから、一人一人の発育及び発達状態や健康状態についての適切な判断に基づく保健的な対応を行うことが大切です。

ー人一人の子どもの生育歴の違いに留意しながら、欲求を適切に満たし、保育園等では特定の保育士が関わるように努めることが大切です。

 

また、保育園の中では、乳児保育に関わる職員間の連携や嘱託医との連携を図り、適切に対応することは必須事項です。

担当保育士と保護者との信頼関係を築きながら、子どもの24時間を双方で共有し、保育を進めるとともに、保護者からの相談に応じて、保護者への支援に努めていくことが大切です。

 

担当の保育士が替わる場合には、子どものそれまでの生育歴や発達過程に十分に留意し、職員相互で協力して対応することが求められます。