お母さんの前ではいい子なのに

お母さんの前ではいい子なのに

三歳半の優子ちゃんは言うことをよくきくとても育てやすい子だと、お母さんのHさんは思っていました。

けれど、最近気になることがあります。

というのは、優子ちゃんはお母さんに叱られると、優しいお父さんのところへ行って、「パパー」とすぐ甘えるのです。

また、パパと二人で出かけると、優子ちゃんはいつもお父さんを困らせます。

例えば本屋さんに入ると、並べてある本をバタバタ落としたりするのです。

お父さんが叱ると、今度は「この本、買ってー」としつこくねだります。

でも、お母さんと二人で外出しても、何かを欲しがって泣くとか、駄々をこねるということはありません。

 

Hさんのしつけの方針は、とてもしっかりしています。

きちんとした生活習慣、子どものわがままは通さない、など申し分ないのですが、残念なことに完全主義なので、子どもを追いつめてしまうところがあるのです。

ついこの間、親戚と旅行へ行ったときのことです。

優子ちゃんがいつも寝る時刻、八時半になりました。

同じ歳のいとこと遊んでいた優子ちゃんに、お母さんは「優子、八時半よ。寝ましょうね」と言いました。

いつもは素直な優子ちゃんでしたが、不服そうな顔をしています。

お父さんは「いいじゃないか。

たまになんだから起きていたって。

明日はどうせゆっくりするんだし」と、いつものように助け船を出しました。

一事が万事、優子ちゃんはお母さんの前で息抜きすることができません。

その反動で、優しいお父さんの前では、普段許されないことをやってしまうのです。

Hさんのように子どもを追いつめてしまう場合、強い相手の言うことだけをきく子になってしまう危険性があります。

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