育児の主導権はあくまでもその子の両親です
親の決めたルールをおじいちゃん、おばあちゃんにも理解してもらい、一貫した対応をするよう協力してもらわなければなりません。
ところが三世代同居の場合、この原則が崩れてきます。
剛君のお母さんはどちらかというと受け身で協調性を大事にするタイプでした。
自分がしっかり主導権を握らなければとは考えず、問題を感じないわけではないけれど、この子の生まれた境遇だから受け入れようと思っていたのです。
「いろんな人に可愛がってもらえるのは幸せなことだし・・・」と言っていました。
当然、おばあちゃん、おじいちゃんの甘やかしはとどまるところを知りません。
剛君が二歳をすぎても話すより奇声をあげたり泣きわめくことのほうが多いのは、言葉で言わなくても大人が要求をかなえてくれることと無関係ではないでしょう。
食生活では、甘やかしの悪影響はもっと顕著にあらわれてきます。
食事のときじっとしていられないのも、「食べているときは静かだから」と口にものを入れられて空腹を覚える暇がなく、食べることに集中できないからに違いありません。
「味の濃いものでも、添加物の多いものでもかまわず与えられるから、困ってしまう」とさすがに剛君のお母さんも頭を抱えていましたが、話をしてもすぐに忘れられてしまうようで、一週間もすれば元通りになってしまいます。
一歳半健診までに、とうとう虫歯ができてしまいました。
主導権は親がしっかり
おじいちゃんやおばあちゃんと暮らすことは、子どもにとってよくない面ばかりではありません。
親とは違う年代の人間がいることで、考え方も体の調子も人それぞれなのだと、肌で学んでいくでしょう。
受け止めてくれる人が多くて、救われることもあるでしょう。
親にとっても、慣れない子育てを支えてくれる人がそばにいてくれて、密室育児に陥らないですむのは、ありがたいことです。
ただ、昔と違って便利で暮らしやすい世の中になった分、子どもに手をかけすぎてしまいがちです。
それぞれ自分の生活に忙しい大人たちの間で、子どもはうろうろしながら、何となく見守られて育っていった時代と比較してみると、残念ながら現代社会においては、常に「年寄りがいるのはいいものだ」と言い切るわけにはいきません。
それに、物があふれ、食べ物が余る世の中ですから、可愛がっているつもりで子どもを甘やかしてダメにしてしまうことが、日常的に行なわれています。
おじいちゃん・おばあちゃんのやり方に任せていたら、結局何もかも子どもの言いなりになっていた・・・なんて、笑ってはいられません。
子育ての責任はその子の両親にあります。
あとでツケが回ってくるのも、親なのです。
そこのところをしっかり自覚して夫婦で話し合い、おじいちゃん、おばあちゃんの理解を求めていかなければなりません。
相手を尊重して仲良くやっていく姿を子どもに見せるのはすばらしいことですが、泣いたときの対応や、食事、寝かしつけといった「育児の要」になることの主導権を握るのは、祖父母でも子ども自身でもないのです。
そこのところをきちんと押さえておかないと、子どもはちやほやされるばかりで、あるべき育ち方から逸れていきます。
結果的に、相手の立場を思いやることのできない、わがままな子どもを育ててしまうことにもなりかねません。