食べることへの意欲を第一に考えてください

子どもどもにとって「食」は、意欲、生活の達成感と自律の力を育てていくことに直接のつながりがあります。

自分のことをわかっていて、押しつけられることのない状態が、子どもの自発性ややる気を引き出しますから、まずは「子どもが自分で興味を持って食べること」や「自分でおなかがいっぱいになったことがわかること」といった、「自分の心や体の状態を、自分でわかること」をたいせつにしたいですね。

 

定量や栄養のバランス、材料の種類の数を気にするのは、大人になってからの考え方だといえます。

その枠に、最初から子どもを当てはめようとすると、子どもの自発性や意欲、興味や自分でやろうとする力といった、心を育てる役割をないがしろにしてしまうことになります。

 

「人と共に食べること」が、人とのかかわりをはぐくむ子どもの意欲が十分に発揮されたら、次には、「人と共に食べること」がたいせつになってきます。


だれかと食卓を囲むことで、「人といっしょに食べるのは楽しい」「人の分は、ちょっと残しておこう」「分けて食べよう」という、人とのかかわりや配慮が始まります。

 

これは、2歳代後半から3歳にかけて、もうすでに始まっています。

 

「家庭に比べて保育園でのほうがよく食べられているみたい」という保護者の声を聞くことがよくありますが、それは、保育の場が、いっしょに食べる相手がいて温かい気分で食べられるからなのでしょう。

しかられたり、指摘されたり、注意されたり、コントロールされたりということがない場では、愉快な気持ちで食べることができるのです。

 

食事のときに、保育者が近くに座ってくれると、子どもはうれしくなります。

それは保育者がいると会話が弾み、楽しくなるからです。

楽しい気分でいると、大人も子どもも食が進みますね。

 

そして、うれしい気持ちでいると、新しい経験に対して心を広げることができます。

珍しい食べ物や新しい味に対して「ちょっとだけ味見を」という意欲が、自然と生まれるのです。

「全部食べなさい」と強く言われても、子どもは緊張してよけいに食べられなくなってしまいますから、「ちょっとだけ、お味見ができてよかったね」と、子どもの心がほぐれるような態度が望ましいですね。

「食べきってしまうという達成感」を持てるように子どもが食事を楽しめない理由に、量が多すぎるという問題があります。

 

大人は、「少しでも健康になってほしい」「少しでも大きくなれ」という気持ちから、つい多めによそってしまいます。

しかし、これでは「食べきる」という達成感を持つことが難しくなります。

 

「食べたよ」「終わりまで食べられたよ」という「成しとげた」という感覚を、人生で最初に経験するのが、「食事」なんです。

  

お絵かきしたり、お片づけができたりという前に、「食べきったよ」という満足感を体験するのです。

「達成感」は、子どもが次のことにチャレンジしようとする意欲を生み出すものですから、大切にしてほしいと思います。

 

また、自発的行為である「おかわり」も、子どもの意欲をそそります。

ほかにも、いろいろな種類をちょっとずつ体験してみるという機会を作るなど、子どもの意欲を育てるような援助ができるとよいと思います。