食育基本法は、なぜ作られたのか
社会や子どもたちの状況を受けて、食育基本法が、2005(平成17)年6月10日に国会で成立しました。
条文の中には、学校や保育所においても、「食」に関する教育が望まれることが書かれています。
今回は、現在日本がおかれている「食」の状況と、「食育基本法」について触れておきたいと思います。
日本は今、大変高度に成長した社会環境の中で、毎日人々はたくさんの消費をしています。
食においても、おいしそうで体にもよさそうな、そして簡単便利な新商品が消費者のニーズに合わせて続々と登場し、食情報も絶え間なく提供されています。
このようの状況下で、食事のバランスを崩す人が増え、病気全体に占める「生活習慣病」の割合が増し、さらに深刻な影を落としているのは、患者の若年化が進んだということです。
一方で、極端なダイエット志向から、「やせ過ぎの若い女性」が増え、なんと小中高生についてまで、ダイエットの弊害が指摘されています。
さらに、消費社会の進行と輸送手段の発達から、輸入される食物の量がさらに増加し、もともと低水準が問題視されていた「食料の自給率」がより低下しました。
このような事情で、消費者から生産者の顔が見えにくくなり、食べ物がどのようにして育てられ、集められ、テーブルに運ばれてくるのかを、子どもたちが理解する機会も減ったのです。
また、家族が揃って楽しく食事をする機会が少なくなり、子どもの食は、手軽で好きなものに偏りがちです。
家族が揃ったときでさえも、それぞれが好きなものを食べるという状況があるのです。
生活面でも、大人に合わせて子どもの生活時間の夜型化が進み、朝食を抜いて登園してくる子どもがいるなど、「食べることや食べる空間をたいせつにする心」が、希薄になってきているようです。
またそのような状況の中で、子どもの自立する心が、育ちにくくなっているとも感じています。