組み合わせの問題

 

 

子育ての難しさは、親と子の組み合わせは千差万別という現実にも潜んでいます。

エネルギッシュなお母さんのところに、同じ気質を持つ子が生まれてくるか、おとなしくて気の弱い子が生まれるかでは、親子関係はまったく違ったものになってきます。

 

この場合、ある母子の組み合わせでよい結果をもたらしたやり方が、他の母子に同じ効果をもたらすとは限りません。

 

よく、「同じ親から生まれて同じように育てたのに、どうしてこんなに違うのかしら」と嘆く声を聞きますが、それは当然のことなのです。

人間同士の組み合わせには、幾千、幾万通りの組み合わせがあるのですから・・・。

 

子育ては、工業生産物をつくるのと同じように機械的にはいかない、そこが何より難しいところですが、どんなに子どもに愛情を持っていても、親子の組み合わせによっては「いいこと」も「悪いこと」に変化してしまうという、その現実を理解しなければならないと思います。

 

どなり声が絶えない日々

 

「どうしてそんなことするの!」朝からYさんの大きな声が聞こえます。

幼稚園年長組に通う洋子ちゃんが、1歳半の康太君のプラスティックのコップを落としてしまったのです。

「だって、康太が片手で持とうとするから、こぼしちゃうと思ったんだもん!」。

落とすまいとして手を出し、かえって見事に落としてしまったのです。

 

「いらないことするからでしょ!あんたが手を出すとよけいひどくなるんだから。この前もそうだったじゃないの」

「だって、こぼしちゃいけないと思ったんだもん!」

「結局あんたじゃないの、こぼしたのは!それがよけいなお世話っていうの!」

「お母さんの意地悪!」

「意地悪!何言ってんの!?」

「ほんとのこと言ってるだけよ!」

Yさんの家ではこんな会話が日常的です。

 

Yさんは、「母親なんだから、何とか子どもをしっかり育てなければ」と考えています。

一方、洋子ちゃんは、「康太は怒られなくて、私ばつかり怒られてる。

お母さん、私のこときらいなんだ」と思っています。

 

Yさんの育児は、長女の洋子ちゃんに特に神経質です。

初めての子どもで、母親として初めて出会うことの連続なのです。

 

Yさんなりに一生懸命頑張っていたわけですが、その頑張りが火の粉になって洋子ちゃんにふりかかっていることに気づいていません。

火の粉のようなしつけでは、子どもは払いのけようとするばかりです。