ただの「駄々っ子」
俊雄はもう五歳だというのに全然言うことをきいてくれないと、お母さんは頭を抱えています。
朝ごはんにチーズトーストを出したら、「ジャムパンじゃなきゃやだ!ジャムパンにしてよお」。
何も食べないで保育園に送り出すわけにもいかないので、お母さんは「しようがないわねえ」と言いながら、ジャムトーストを差し出します。
買い物に行けば、「これ買ってえ」。
「今日は買わない約束だったでしょ」と言うと、「これ買うの!絶対買うんだからー!」とお菓子を握りしめてわめきます。
お母さんは恥ずかしくなって、「今日だけだからね」と結局買ってしまいます。
夜は夜で、「もう少し、もう少し」と布団に入らず、電気を消して親も布団に入るとようやくあきらめて寝ます。
何かといえば、「やだ」、泣く、暴れる・・・。
さすがに保育園ではもっときき分けよくしているみたいですが。
俊雄の場合は、自立的なのではなく、ただの「駄々っ子」です。
これは、赤ちゃん時代から、お母さんが俊雄の涙に負けて要求をきき入れすぎてきたからにほかなりません。
泣いて騒げば思い通りになる、お母さんの言うことはきかなくていいのだと、彼は思っているのです。
「赤ちゃんの要求はできるだけきいてあげましょう」という甘やかし育児が横行するなかで、こういう、親を甘く見て言うことをきかない子が増えています。